水は沸かせばお湯になる のこと
皆様、如何お過ごしでしょうか。
なかなか、お便り出来ずに申し訳ありません。

ふと気付けば、11月も半ば。
浅間山の頂上には真っ白な雪がおおい、
日に日にその厚さは増していくようで
冬の到来を感じずにはいられません。

ハルニレテラスのクリスマスイルミネーションも
昨日からはじまり、柔らかなら光は
一層冷え込む夜に美しさを演出してくれます。

冬が来たなと実感するこの季節、
繰り返される日常の中で、当たり前のように
蛇口をひねり、あたたかなお湯が手をつたい、
食器を洗い、布巾を絞り、盥に溜まった湯を流しと、
たわいもない一コマの中で、
この時期になると発作的に
10年以上前にスウェーデンで暮らした、
あのお化け屋敷アパートの日々が
鮮明に思い出されます。


スウェーデン生活を語る上で、
欠かせない一つが慢性的な住宅難。

たかが、
一部屋借りるだけで一年、二年待ちなんて当たり前。
ウエィティング・リストなるものに登録しても
契約を結べるなんて奇跡といっても、大袈裟ではない程。
しかも、大学を卒業すれば学生という特権もなくなり、
部屋探しは一層、困難を極めます。

一年のストックホルム生活を終え、隣町での
生活をはじめようとした当時の私にとっては、
それこそ、外国人という身分のもと
部屋探しは一番過酷な試練でもありました。

新住居に対する希望は一日一日と
風船のように膨らみ、
その膨らみすぎた希望は、途端、
空気が抜けるようかのように
音をたてて慌ただしく萎んでいく現実が
突きつけられるという繰り返しでした。
ノーとは言える状況ではない中、
希薄な情報で入居を決めたアパートがこれ。



唯一魅力的だったのが
当時では破格な家賃と、
大学へは徒歩で通える街中という立地。

家主と会うため指定された日にちに
この崩れ落ちそうな建物の前に立った時、
その家賃の意味を知りました。

家主は、私が通う大学の卒業生カーリン。
彼女も大学を卒業後、新天地での
生活を控え、住人を募集していました。

スウェーデン美人を絵に描いたような
美しい顔立ちでありながら
快活な印象だったカーリン。

挨拶もそこそこ、カーリンとともに、
大きく重い、古びたエントランス扉を開け、
いざ中へ。

薄暗い螺旋階段を上り、裏切らない程の
古びた扉を旧式な鍵で開けると、
そこはまったくの別世界でした。
カーリンは大学ではインテリア学部を専攻、
そして、一般的なスウェーデン人同様、部屋の内装は
全て彼女が手掛けました。



目の前には
幼い頃集めた海外雑誌の切り抜きのような部屋がひろがりました。



丁寧に塗られた白壁に、板張りの床。
高揚が抑えきれなかった若かりし日の私に、
カーリンは優しくそして滑らかに賃貸の有無について
たずねました。



文句ない・・・そう、答えた私にカーリンは
「そう!OK!はじめましょう。」

簡単な賃貸契約を結び、早速、部屋の案内に。


台所を案内され、洗い場に目をやると蛇口が一つ。



長らく続いた部屋探しに終わりが見えた安堵感と
想像以上の部屋を手に入れたという自負に、すっかりと
舞い上がっていた私は、その一つだけの蛇口に
まさか、と思いました。
「まさか・・・これお湯も出るわよね?」
彼女はにっこりと、そして、はい、来ました、というように
「まさか!もちろん水だけよ。」
カーリンにとって新しい入居先を求める人々と
何度も繰り返されたであろう、この会話。

私はもうひと呼吸おいて
「もう一度、聞くけど、本当にお湯はでないの?」
「ええ、勿論よ!」
「・・・この極寒のスウェーデンで水だけ?」
「そうよ!お湯が必要なら水を沸かせばいいじゃない!」
若干、呆れたように、そしてなかば、
うんざりしたように答えました。

そう、もちろん沸かせば、水はお湯になるとも。

嬉々としていた私が少しずつ現実を見つめ始めたのを
感じたのか、カーリンは意気揚々と
「洗面所は完備しているのよ。」と
白く塗られた扉を開けると、
そこには申し訳なさそうに小さな洗面台が一つ。
もちろん、蛇口は一つ。
と、そこで、「・・・お手洗いは?」と
もう、一つ一つの質問に何とも言えない感情が
わきあがる自分に
「勿論、外よ。みんなで使うの。」と。
部屋の外に出ると、隣室との間に黒く塗られた扉が。
そこがお手洗い。

お手洗いが共同だってどうってことない。
ストックホルムで暮らしていた
小さな学生寮は無機質でまるで独房のようでした。
台所はワンフロアーの住人達と共同、
でも、簡易的で狭いバスとトイレは
各部屋に完備されていたことを思い出し
ハッとして聞きます。
「・・・ところでシャワーは?」
待ってましたとばかりにカーリンは
「ついてきて!」と部屋を飛び出しました。

石造りの螺旋階段を軽快に下り、
錆びた金具の音が鳴る門をあけ隣の建物へ。
「シャワールームも共同でこの建物の地下なの。
嘘か本当か分からないけど、当時、防空壕として使われていたみたい。」

何故、こんなに損傷が激しいのかと疑問に思う扉を開けると
そこにはまるでテレビで観た昔の炭坑の入り口のように
弱いワット数の裸電球が規則正しく地下に下りる階段を照らしていました。

黴臭く、スウェーデンでは珍しい程の湿気、
水が滴る剥き出しの岩肌にギシギシとなる階段。
そして薄暗い地下には剥き出しの岩を掘ったような大きな穴が無数に・・・。

そんな場所には滑稽な程の白い扉。
開けるとそこには取り付けたといか、
設置してみた、というようなボックス型のシャワールーム。

カーリンは笑顔で、
「何があるか分からないから、
携帯だけは必ず一緒に持ってきた方がいいわよ。」と。
カーリンが言う何かには、あえて触れずに
シャワーを浴びるだけなのに必要なものは
携帯以外にも装備したほうがいいけども、と
苦笑いが止まりませんでした。

破格で格安な家賃の理由が解明するばかり。



当時のわたしにとって不慣れな異国での
生活は言葉の面でも乏しく、
そして何より臆病で弱気で、
「こんな条件だって、教えてくれてなかったたじゃない!」
なんて言えやしない。

今だったらその不当性を主張して、
もう一踏ん張り、家賃交渉だって出来るのに。

部屋に戻り、カーリンから鍵を手渡され、
これから起る自分の生活に途方も無い不安を抱いていると、
カーリンが帰り際、
「あぁ、そう。言い忘れたけど、表玄関の扉が古すぎて
冬になると、ホームレスやアルコール中毒の人が
一晩、宿代わりに入って来ちゃうの。
でも、扉開けて寝てても警察には通報しないで。
悪い事はしないはずだから。」

そう告げるカーリンに喉から出掛かる言葉は遅すぎ
彼女は紙一枚の契約書と今月の家賃を握りしめ、
古びた螺旋階段を軽やかに下りていきました。
そう、だってその冬って、今じゃない・・・と。

正直わたしは、この世の終わりだと思いました。

それから確か、一年か二年程、そのアパートに暮らしました。

多少のハプニングはありつつも、
日々の生活に慣れるのが精一杯で、
旧式のオーブンを使いこなしたり、
混雑するシャワールームのベストな時間帯を見極めたり、
それこそ、寒い日の洗顔のための
水と湯の心地いい割合を探ったりと、多かれ少なかれ生活には
順応していきました。

浅間山に雪がおおいはじめるこの季節、
繰り返される毎日の当たり前の光景、
蛇口をひねり、温かな湯が手をつたい流れる度、
この世の終わりだって、目に涙を溜めたあの晩の自分を
懐かしみます。

そして、慣れきった生活に、背を正すかのように
あの頃の生活が教えてくれます。

そう、色々なことを。







































































































 
スウェーデン、デンマークへ のこと
今日、相変わらずでございますが
慌ただしくも、スウェーデン・デンマークへと
無事、旅立ちました。
今回は珍しくも5カ月ぶりの渡欧で、2週間強の滞在。

家具は勿論、アンティーク小物、作家さんの作品等、
買い付けは満載だそうです。

コンテナ到着予定は翌年1月を予定、小物類は
少し早めに12月頃にご提案出来れば。
またお便りさせて下さいませ。



味よし(?)、形悪しのうさぎパンケーキを食して
いいもの出会えますように!





 
あるエプロン のこと
ご存知のとおりと,
改めてお伝えしたい程、わたしは家事全般が苦手です。
当たり前のように整理整頓のセンスはなく、
ましてや効率さは皆無であり、
まったくもって行き届かない家事で我が家は
成り立っています。

ただ、嫌い・・・ではなく、
苦手・・・というラインを保ちつつ。

やっぱり、
掃除が終わったあとのお部屋は清々しく、
洗い上がったばかりの洗濯ものは爽やかで、
アイロンのかかったシャツに袖をとおすのは気持ちよく、
ちょっとしたおかず作りは充実感を与えてくれます。

完璧・・・ではないけれど、不完全なりに家事に
好意をもっております。

今回、スウェーデン出張時に
出会ったのがリトアニアのデザイナー。
短いショートカットがとても可愛らしい女の子で、
ゆっくりと単語を選びながら話をしてくれるのが印象的でした。
そんな彼女の作品がこのエプロン。



一目で「こんなエプロン欲しかった!」って。
麻素材、黒とこのナチュラルなお色で入荷致しました。

秋晴れの毎日、不完全でも行き届かない家事でも
この一枚で私の一日はもっともっと楽しくなるのではと、
思っております。









 
ちょっと遅れた秋になごりがありつつも、そろそろ冬支度 のこと
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
こちら軽井沢は輝くように黄金色の木々の葉が
目にもまばゆく美しく、まさに紅葉日和の一日となりました。

それでも一日、一日と気温は下がり、気付けば
厚めのセーターに袖をとおし、首にはマフラー・・・早朝の寒さを
思うとコートも・・・と思いつつも、今からこんなに着込んでは
冬が乗り切れるのかと不安になりつつも、少しやせ我慢の一日でした。

10月のオーサとヘッレの展示も無事に終わり、
彼女達は幸せ一杯でスウェーデンに到着したと便りを受けました。
皆様の温かなお心遣いの中で、このようなイベントが行えました事、
深く深く、感謝しております。ありがとうございました。
今は、お客様から頂いた注文をせっせと制作してくれています。

11月は再度、北欧へ買い付けを予定。
昨年同様、12月に予定しております名古屋高島屋さんへの
北欧イベントの参加と、クリスマス&お正月での御品のご提案を
探しにいってまいります。

そして、今週はこのようにご提案・・・。
ウェグナーのデイベットも到着致しました。


窓からみえるハルニレの紅葉に合わせて、赤や木製小物を大きなテーブルへ


それから、スウェーデンからブランケット類も到着。


明日の夜はまたディスプレーかえでございます。
今回はチーク材のエクステンションテーブルが納品予定です。

またお写真撮って、お便りさせてくださいませ。
それでは。



















 
オーサとヘッレ のこと
最初に改めてお礼をお伝えしたく・・・。

10月12日よりはじまりました、「オーサのしごと」展。
多くのお客様に御来店頂きました事、本当に本当に
心よりお礼申し上げます。
有り難うございました。

今回、オーサと共に活動しているジュエリー作家、
ヘッレも一緒に来日して下さり、
二人の感性豊かな美しいジュエリーを
提案して下さいました。

初日から二日間、NATURにて皆様にご挨拶を
させて頂き、充実した時間を過ごす事が出来たこと、
二人ともこの上なく、喜んでおりました。

もちろん、オーサとヘッレのその素晴らしい人柄、
そして何より、彼女達を温かくむかえてくださいましたお客様に
感謝の気持ちで一杯です。




今回、初日からのディスプレーは彼女達二人の思いがあり
全てお任せ致しました。

それは、
多くの場合、ジュエリーは箱の中に展示されるのが当たり前。
でも彼女達は、一人でも多くのお客様に自分達の作品に
触れてもらい、試してもらい、感じてもらいたい
という思いがあって、ショーケース無しの展示となりました。

このような方法は私達にとっても初めてではありましたが、
テーブル越しに、お客様に気兼ねなく手に取って頂き、
会話を重ね、お選び頂けるその瞬間は、本当に嬉しい限りでした。

オーサとヘッレの展示は20日まで、
ご提案させて頂きますのでどうぞ、よろしくお願い致します。

そして最後に、
ありがとう!オーサ、ヘッレ!






 
オーサのしごと のこと

オーサのことをおもうたび、
いつも心の中には夏の向日葵が重なります。

彼女はわたしの大学時代の同級生で、
ジュエリー学部に所属していました。
学部生のときに行われる、毎度毎度の
作品プレゼンテーション。
極度の緊張性と拙い英語力の自分にとって、
その時間はただただ、表現出来ない程、
途方も無く辛い時間でしかありませんでした。
話すたびに注がれる、同級生や教授陣の視線は
突き刺さる程痛く、
落ち着いて、落ち着いて、
とおもえば思う程、
空回りになる・・・そんな時、いつも奥の方で一人、
私の不慣れなプレゼンに
熱心に耳を傾けてくれていたのが
オーサでした。

正直言えば、学部も違うので「仲がいい」とは
ちょっと違う。
でも、オーサは廊下ですれ違う時や、学食で見掛けるとき、
そして一緒に講義を受けるとき、
彼女に目をむければ、そこには
「笑顔」しかなかったように感じます。

それはまるで、一本の黄色い向日葵のような笑顔。
それがオーサでした。

そのオーサがこの度、NATURにて作品の展示販売を
行います。


10月12日から10月20日までの9日間、
スウェーデン人ジュエリー作家 
オーサーの作品展示販売を行います。
初日は作家本人もスウェーデンより来日し、
店舗にて皆様にご挨拶させて頂きます。
同時にスウェーデンやリトアニアから
新作のノルディックジュエリーも入荷致します。
皆様の御来店を心からお待ち申し上げております。

「ずっと!おしゃれ上手」西村玲子さん著 のこと
 
 
イラストレーターであり、エッセイストの
西村玲子さん著書「ずっと!おしゃれ上手」(メディアファクトリーさん発行)に
NATURのことをご紹介頂きました。

実家には西村さんが書かれた本が何冊も何冊も、母によって
大切に保管されていました。
本を手にするたび、ページをめくっては、西村さんの
ものに対するきらきら輝く眼差しや好奇心、暮らしへの愛情、
イラストに描かれる伸びやかで美しい装いの女性達に、
「おしゃれ」という言葉の響きを幼心に記憶したように感じます。

そんな素晴らしい一冊の本の一ページにご紹介頂ける事
心から感謝しております。



スウェーデンのお洋服 のこと
 

スウェーデンからお洋服が届いております。
今年はワンピースを中心に、ニット類も仲間入り。
これからの季節、ジュエリーやショールの小物で
色々と楽しんで頂けるかと思い、極力シンプルな形で素材感を重視。

皆様のお越し心よりお待ち申し上げております。

冬眠気味な日にしておきたいこと のこと
 
ねることと、たべることが
とにかく、好きなようで
秋は特に、美味しい食べ物も多いし
何より、朝夕の涼しくなった空気が
少し厚めの掛け布団に包まる贅沢感を増幅させ
その上、
多少の満腹感があった日なんて
その幸福感は絶頂に達するのではないかと
一人、単純な思考回路で体が癒されます。

それとは正反対に旦那さんは短時間睡眠の
働き者で隣の部屋からは
朝から「カキカキ・・・」とペンを
走らせる物音がします。

「まだ眠れる・・・。」と言いながらフラフラしながら
寝室から作業机に移動。
向かいに座ってクレヨンやら画材広げて、昨晩みた夢の報告が
終わると、同じようにカキカキ。


実は
NATURオリジナルでおぼんを、スウェーデンでつくるのです。
とにかくいっぱい、いっぱい!手を動かしてイメージひろげて。

冬眠気味な今日この頃。
でも寝いいる前に、すてきなスケッチが出来るといいなと、思います。








9月・・・の軽井沢より のこと
 
8月の抜けるような青空の下、
夏らしい賑わいもあっという間に過ぎ去ってしまい
気付けば、夜風にのって鈴虫のなき声が聞る9月となりました。
なかなかお便りが出来ずに申し訳ありませんでした。

久しぶりにお店の様子を・・・。

新しいお品もスウェーデンより到着しております。
8月の仕入れ時にお願いしたスウェーデン製の毛糸。
数十種類以上・・・本当にたくさんの色見本の中から
「これは!」と思えるものを選びお願いして参りました。
仕入れ時には担当者が横にピッタリと並び、
わたしが色を選ぶたび、
「うん、その色はいいわ」とか、
「それの色並びはサイコー」やら
「いいチョイスね」など
そして最後には
「それは違うんじゃない」などなど
手厳しいご意見を伺いながら
やんややんや、選んだ色達です。


青系・緑系・黄色系・赤系・グレー系で
きれいなグラレーションになるよう気をつけてみました。

編む時にストライプにしたり、お色を混ぜて2本取りで
混合にしても楽しんで頂けるように・・・と思っております。


これからあい子さんにもお願いして、新しいニットを制作予定です。


NATURでお願いしているグラノーラも秋模様に衣替え。
赤い袋でお願い致しました。


いつもシンプルなフェルトのポットマットも
秋の夜長が楽しくなるような、落ち葉の模様でお願いしました。



これは・・・前の週の店舗ですね。

また今週末も9月2回目の連休となります。
皆様に次の週も楽しんで頂けるように、週末前には模様がえを。

それでは。

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